院長のコラム第80回 桑の実
そろそろ梅雨入りの時期になりました。田植えも始まります。
子供の頃、この時期の思い出は、一つは蛍です。故郷矢掛は「蛍の里」と言われています。現在は「宇内ホタル公園」で鑑賞するようですが、小学生の頃、家の裏の星田川のブッシュ1本1本に数十匹の蛍がいて、本が読めると形容できるぐらい光っていました。水田の除草に、薬を使用し始めてから激減していったそうです。矢掛町宇内では、蛍の養殖を地道に行い、美しい景観を残す努力が続いています。
もう一つは、その頃食べた木の実です。ぐいび(びーび と言っていました)、ゆすら(梅)、すもも、そして桑の実があります。「びーび」は、しっかりと熟すれば甘いのですが、たいてい口の中に渋みが残り、あまり好きではありませんでした。親戚に甘くなる「びーび」があったのですが、私たち子供の口には入りませんでした。その点、「ゆすら」は当て外れが無く、すっぱい味覚ですが、すっきりとしていて、種を出しながら沢山食べていました。時にお腹をこわすことがあり、親から「ぎょうさん食べんように」と注意されたのを思い出します。「すもも」もよく食べました。こちらは少し大型で熟していれば、「ゆすら」より甘味があったように思います。夏に食する柘榴がありますが、実は「ゆすら」と同じぐらいの大きさですが、種が大きく身が少ないので、めんどくさく、あまり食べることはありませんでした。
ここまでの実は、食べたことがあるという人がいるのですが、桑の実を食べたと言うと、「桑の実?」と、知らない人がほとんどです。矢掛は、昔養蚕が盛んでした。蚕は桑の葉を食して繭(絹)を造ります。そのため、桑の木が多く植えられ、実は6月ごろ食べることができます。イチゴ様の風貌・大きさで、赤黒く熟します。もう60年も前の話ですから、「甘かった」と言う程度しか覚えていませんが、前記の実と比較すれば数段甘かったように思います。最近は「桑の実のジャム」が造られているようで、過日友人からいただきました(「自家製」が、大変美味しいものでした。
びーび、ゆすら、すもも、桑の実、もう何十年も食べていません。機会があったら、どんな味か懐かしく、食べてみたいと思います。