院長のコラム第59回 秀吉の活
山陽新聞朝刊 新聞小説「秀吉の活:作者 木下昌輝」を毎日楽しみに読んでいます。
新聞小説を毎日欠かさず読むのは、朝日新聞「宿神:作者 夢枕莫」以来です。
「秀吉の活」は豊臣秀吉の物語で、百姓から次第に織田家の家臣として出世してゆく過程を楽しく読むことが出来ます。1月17日、18日、19日は「第5章天下人の勤活(18)、(19)、(20)」です。藤吉郎が織田家家臣を続けるかどうか悩んでいることに対し、佐久間信盛に妙薬(教え)を貰い受けに行った時のシーンです。
佐久間信盛ですが、私の今までの知識では、織田家の宿将ではありますが、愚将であったと認識していました。石山本願寺との長い戦いで軍功もあげられず、織田信長から「19条にわたる折檻状」をつきつけられ、織田家から追放され、高野山に落ちて行った凡庸の人と思っていました。
信盛、藤吉郎の会話を一部紹介します
「どうして、上様は松永め(松永弾正のこと)に三度も裏切られたのでしょうか」
「それは、上様が松永の心を攻め落とすことが出来なかったからじゃ。力だけで屈服させても、いずれまた乱が起こる。結局、どちらかが滅ぶまで殺し合いが続く」
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「藤吉郎よ、このまま儂が本願寺を囲み続ければ、数年の後には屈服させることができる。なれば、どうなると思う」
「そうなれば、大手柄でございます。上様からご加増がありましょう」
「本願寺を下せば、儂はきっと追放される。上様の目には、儂の戦い方は敵を恐れ、いたずらに戦を長引かせているように見えるだろう。きっと、きつい折檻の言葉と共に、すべての禄を没収される」
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「上様が目指すもののためならば、儂の手柄や所領など惜しくはない。ちっぽけなことよ。その礎となれるなら、喜んで地位や名誉など捨ててやるは」
信長の「天下布武」の先にあるもの「戦国の世を終わらせ、平和な世にすること」を夢見ての言葉です。
作者によって、凡庸の人が、こんなに生き生きと、魅力ある人物に変わるのか、これからの展開に心が踊ります。
<追伸>山陽新聞社から感謝状が届くかなー