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院長のコラム第93回 涌井のストレート・・・投球雑感

第83回院長コラムに「私が野球投手の中で<軸がぶれずに、すっと入ってピシッと投げる>投手として、全盛期の西武涌井をあげました。全盛期とあえて挙げたのは高校時代、西武時代の涌井しか知らず、最近彼の投球を見たことが無く、もう衰えているだろうと勝手に思っていたからです。416日ロッテ対ソフトバンクの試合のビデオを見てびっくりしました。力強さは全盛期ほどではありませんが、投球フォームは相変わらず美しく、腕の振りが一定で、「ピシッと伸びてゆくストレート」は「これこそ本当の直球」です。彼のような質の良いストレートを投げる投手が少なくなりました。「投球の基本は外角低めのストレート」の教科書そのものです。

投球の腕の振りの速さ(スイングスピードとしますが)は、各自それぞれです。ある投手がスイングスピードを速くすれば、速い球が行くというのは、一般的には合っています。スイングスピードの速い投手の方が、遅い投手よりも速い球が行くというのも合っているでしょう。しかし投手個人は、それぞれ、自分に合ったスイングスピードがあることを理解しなければなりません。ゴルフでタイガーウッズにはタイガーのクラブスイングスピードがあり、石川遼には石川のクラブスイングスピードがあります。石川選手がタイガーウッズ選手のスイングスピードに迫ろうとすれば、明らかに乱れるでしょう。タイガーが20代のスイングスピード(距離)を求めれば、やはり乱れるでしょう。緩い球を投げようとする時はスイングスピードが遅く、ピンチになった時は力んでスピードをあげようとするのは一流の投手ではありません。力の入れ具合(強弱)はありますが、スピードは各自一定であらねばなりません。
さてこの「一定のスイングスピード」を手に入れるにはどうしたらよいのでしょうか。
これはプロコーチに聞くしかありませんが、私見を述べたいと思います。

まず鍛え上げた体力が必要です。体力強化は、機械・器具を使ったウエイトトレーニングと野球の練習によるトレーニングがあります。野球動作は左右非対称の動きです。ですから、ウエイトトレーニングで左右対称にバランス良く鍛えなければなりません。その筋肉を野球仕様にしてゆくのは、やはり野球練習・ランニングしかありません。
先日NHKで、引退したイチロー選手のドキュメント番組への私の感想を紹介します。番組の中で、自宅に設置された機械でのトレーニングが盛んに紹介されました。しかし、もう一方、試合前、球場での地道な準備映像はありませんでした。球場で数時間の準備運動をするとの以前からの報道を、映像に出してほしいと思いました。
「筋力強化ばっかりしている」という誤ったメッセージが伝わらなければよいがと思います。
野手が向上のために、打ち込み数時間、ノック数時間とかの報道があります。昔巨人軍「茂林寺の1000本ノック」とか「恐怖の伊東秋季キャンプ」と報道されたことがあります。要は強制的・自発的(自発的はほとんど無かったでしょうが)に鍛え上げて強くなった歴史があります。現在でも程度の差はあれ、同じようなことが行われています。4年前の広島カープの秋季練習「毎日1000スイングー高校野球のように」なども強打復活に貢献しています。ことほどさように、野手の強化では色々私たち素人にわかる練習が報道されるのですが、投手に関しては意外とありません。
では投手について私見です。
やはり全力での投げ込みでしょう。外角低めのストレートを全力で投げる事でしょう。7-8割の力での投球スイングが理想と言いますが、このスイングを獲得するのは、5-6割から徐々に上げていって、7-8割にするのでは ありません。全力投球から、自然に7-8割に降りてきて初めて、自分のものになると思います。その時には「自分のスイングスピード」が出来上がっているはずです。体力強化を合わせて行いながら修得するしかないと考えます。

「スイングスピードの一定した良質なストレート」の手本が、最初に述べた「涌井投手のストレート」です。