院長のコラム第6回 老人骨折の治療の進歩-一つの技術開発
皆さん、骨粗鬆症という言葉については、よく聞くと思います。専門的な定義は「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」です。
では、骨粗鬆症で何が一番怖いのでしょう?それは骨折です。骨折が起きたとき、骨粗鬆症が怖い理由は、手術の時、スクリューなどの固定力が弱いからです。従来の手術器具では、「糖に釘の状態、あるいはトーフに釘の状態」の固定しかできない症例がありました。
骨粗鬆症を基盤にする骨折の中に、腕のつけね(上腕骨近位部骨折)、手首(橈骨遠位端骨折)の骨折があります。これらの骨折は、従来保存的に治療する割合が高かった骨折です。しかし、その方法では上肢、手の機能障害が怖く、何かよい固定方法がないかという時代が続きました。しかし、ロッキングプレートが開発、導入され、その固定力は飛躍的に向上しました。このプレートの特徴はプレートにスクリューをねじで固定(ロッキング)でき、プレートとスクリューが一体化できたことです。従来のプレートにはこの機能はありませんでした。
固定強度が飛躍的に向上したため、これらの骨折を手術することが多くなりました。手術、そして積極的なリハビリテーションで機能低下を起こさない治療法が、現在主流です。
一つの技術開発が、老人骨折の治療に福音をもたらしています。